第20回:コネクテッドカー・自動運転車(自動走行車)とデータに関する検討

1. はじめに

(1) Connected Industriesとデータ

 Society 5.0*1に向け、コネクテッド・インダストリー(Connected Industries*2)の実現に向けた動きが本格化している。2017年3月には、世耕経済産業大臣、高市総務大臣、ツィプリス独経済エネルギー大臣(すべて当時)が、「ハノーバー宣言」といわれる第四次産業革命に関する日独共同声明を署名・発表し、この中で、人、機械、技術が国境を越えてつながる「Connected Industries」を進めていく旨が宣言された*3

 コネクテッド・インダストリー実現には、データ活用が必須である。そこで、以下の図のような関連制度整備が進んでいる。

 

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経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「産業データ共有事業について」*4より

 このうち、2018年6月施行の生産性向上特別措置法では、コネクテッド・インダストリー税制や公的データ提供要請制度が導入され、コネクテッド・インダストリーにおけるデータ活用支援施策がとられている*5

 

(2) コネクテッドカー・自動運転車(自動走行車)とデータ

 そのようなコネクテッド・インダストリーに向けた動きの中でも、移動における「コネクト(つながり)」の事例として、コネクテッドカーおよび自動運転車が注目されている*6

 具体的には、自動車にセンサーと情報通信機能が搭載され、自動車と自動車、そして自動車とITS(高度道路交通システム)*7の間等で通信が行われ、データがやり取りされることが挙げられる。「コネクテッドカー」は必ずしも「自動運転車」と同義ではないものの、自動車が他のシステムと連携し、円滑に情報のやり取りを行うことができれば、より高いレベルの自動運転を、より安全に行うことができるようになる。また、遠隔操作型自動運転*8のように、自動運転の中には、コネクテッドカーを前提としたものも存在する。このように、コネクテッドカーおよび自動運転車とデータの間には極めて密接な関係がある*9

 コネクテッドカーについては、時刻情報(タイムスタンプ)、運転環境情報、車両メインテナンス情報、車両パーソナル化情報、サービス・アプリ管理情報、運転者・同乗者情報(取得・保存可能な場合)、位置・方向情報、車両属性情報、車両走行状態、安全運転情報、気象条件情報等の様々なデータの取扱いが不可欠である*10

 自動運転車については、道路交通法改正案*11および道路運送車両法改正案*12が作動状態記録装置(仮称)による記録等に関する規定の整備について規定しており*13、SAEレベル3の自動運転システムについて、作動状態記録装置の設置が義務付けられ、それによって収集されたデータが利用されることが想定されている*14(「自動運転車の安全技術ドガイドライン」*15も参照*16)。

 以下では、このような、コネクテッドカーおよび自動運転車のデータの法的問題について概観したい*17

 

2. データ保護と利活用の二律背反

 データの積極的な利活用は、コネクテッドカーや自動運転車の技術向上につながる。例えば、特定非営利活動法人ITS Japanは、災害時に乗用車・トラックの通行実績情報を集めて通れる道路のマップを作る等の活動を実施しており*18、このようなデータ活用は技術向上に資する。一方で、とりわけ、(それが個人情報に該当するかはともかく)個人との関係が深いデータについては、データ保護の要請に目配りすることもまた必要である*19。この意味で、データ保護と利活用は二律背反の関係にある。

 ここでAIネットワーク社会推進会議*20は、その報告書の中で、AIのネットワーク化による社会の変化とそのリスクへの対応を検討するための具体的なケースとして移動に関するケースを検討し、自動運転により取得される移動履歴やカメラ映像等について、プライバシーに配慮しつつ、データの積極的な利活用が期待されるとして、プライバシーの重要性と、データの積極的利活用の二つの相反する要請を調和させるべきことを指摘する*21

 「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」でも、「個人情報又は匿名加工情報(以下「個人情報等」という。)を含む官民データの利活用の推進に当たっては、……個人情報保護委員会による個人情報等の保護及び適正かつ効果的な活用に係る施策と連携しながら、個人情報保護法の規定に則った個人情報等の適正な取扱いが確保されるよう留意しつつ、推進を図る」とされている*22

 コネクテッドカーや自動運転車の文脈におけるデータ保護の重要性に関する有名なエピソードとして、2014年1月に「インターナショナルCES」でフォードのジム・ファーリー上級副社長(当時)が「我々はドライバーの法律違反をすべて把握している。フォードの自動車にはGPSが付いているから、何をしているか知ることができる」と発言して大いに物議を醸した事案がある*23

 コネクテッドカーや自動運転車の文脈では単純な位置情報を超えて、このようなセンシティブなデータが共有される可能性もある。例えば、全国各地で行われる自動運転車の公道実証で得られたデータの共有対象として、自動運転車の通信方式の評価、信頼性等の技術的データ、実証地域のニーズに関するデータに加えて事故データ、ヒヤリハットデータ、オーバーライドデータ、安全関連データが挙げられている*24

 データの利活用の要請も重要であるが、コネクテッドカーを不安視する人が日本など6か国での調査で半数を超えたという報道もあり*25、データ保護の要請を無視することはできない。

 

3. 適切なデータ利活用のために

(1) データを規律する関連法令

 データに関しては、①プライバシー・個人情報に関する規律、②不正競争防止法に関する規律、③著作権法等の(不競法以外の)知財法に関する規律、④刑事法に関する規律、⑤契約に関する規律*26、⑥その他(独占禁止法、不法行為法等)という様々な規律がある*27

 以下では、個人情報の問題を中心に、コネクテッドカー・自動運転車の文脈でどのように個人情報を利活用するかについて検討する。

 

(2) 個人情報保護法と情報銀行・データ流通市場

 個人情報保護法(以下「法」という)は「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」の三つのキー概念ごとにそれぞれ異なる規律を定めている。

 キー概念の一つ目が「個人情報」(法2条1項)である。個人情報には従来型個人情報(同1号)と個人識別符号型個人情報(同2号および法2条2項)があり、両者は「特定」の個人を「識別することができる」という点で共通している。また、当該情報単独で特定個人を識別できなくても「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」(法2条1項1号)も個人情報になる(容易照合情報)。例えば、自動車メーカーAが、①個人であるオーナーBの情報を含む顧客リストを有しており、②特定の自動車CのGPS情報を「C」という自動車識別コードと共に保有している場合において、③オーナーBが「C」という識別コードを有する自動車を保有しているというデータを顧客リスト上で管理するなど①②の情報を「照合」することが可能であれば、このGPS情報は個人情報とされる可能性がある(自動車のオーナーと実際に運転している者の同一性の問題は後述する)*28

 ところが、個人情報保護法上、個人情報に適用される規律は、利用目的の規律や取得規制が主なものであり、保管・管理や利活用に関する規律は原則として単なる個人情報には適用されない。

 そこで出てくる二つ目のキー概念は「個人データ」である。これは、個人情報データベース等を構成する個人情報(法2条6項)である。データベース化され、容易に検索等ができるように体系的に構成された個人情報は、「個人データ」とされ、個人情報一般よりもより強い保護が与えられている。「個人データ」に関しては保管・管理や利活用に関する規律が適用され、個人情報取扱事業者は安全管理措置を講ずる義務(法20条)を負い、第三者提供に関する規律(法23条)も適用される。

 さらに、強い保護が与えられているのは、三つ目のキー概念「保有個人データ」である。「保有個人データ」は、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去および第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであり(法2条7項)、本人が自己の情報に適切に関与できるように開示、訂正、利用停止等の請求が認められている(法28条以下参照。なお法27条参照)。

 このような仕組みに照らすと、一般に、あるデータが個人データであれば、本人のコントロールが相対的に重視され、データの共有が相対的に困難となっていると評することができる。すなわち、個人データを第三者に提供する際に、原則として本人同意が要求されており、例外はあるものの、本人の同意がない形で広くデータが流通する状況は想定されていない。逆にいえば、コネクテッドカーや自動運転車の文脈においては、一般にデータが広く共有され流通されることによる社会的ベネフィットが期待されているものの、それが「個人データ」のままであれば、そのようなデータの広い共有・流通による社会的ベネフィットを得ることは困難であり、広くこれを流通させるためには、後述の匿名加工等の一定の措置を講じる必要がある。

 近年では、データ利活用を行うための制度整備を推進すべく、データ流通市場/データ取引市場についての議論が始まっている。「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」は「特に我が国が強いリアルデータの利活用のためには、中期的には、データのアーカイブ化が進み、データの出し手とデータの需要者との間でマッチングがなされ、必要な時にデータが流れ、データが相互に利活用される仕組み(「データ流通市場」)の定着が必要」であると指摘する*29。「データ流通環境整備検討会 AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめ(案)」は、PDS、情報銀行、データ取引市場等について検討している*30。2018年6月には、情報信託機能の認定スキームのあり方に関する検討会「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」が出された*31

 現行の個人情報保護法の枠内でどこまでデータ保護と利活用のバランスをとることができるかは問題であるが、本人の適切な関与の下でのパーソナルデータを含むデータ流通を実現するための制度整備がなされることが期待される。

 

(3) 実務的対応?

 もっとも、上記のような制度整備は現在検討中であり、現時点ではパーソナルデータが流通する仕組みは十分に整備されておらず、コネクテッドカーや自動運転のためのデータのやり取りや取扱いには課題がある。実務対応はどのように行うべきだろうか。

 まず特定個人を識別しうるデータの洗い出しをする必要がある。この点については、自家用車と商用車を区別して取り扱うべきことが指摘されている。例えば、「自動走行の実現に向けた取組方針報告書Version2.0」は自家用車は、個人所有となるため、車両データの扱いには考慮が必要としており*32、自家用車のデータの扱いは慎重を期す必要があるとされている一方、商用車の走行履歴データについては車両のID・走行位置・走行速度等の情報で、個人が特定される情報は含まないものに関する取引事例が報告されている*33

 また、自家用車の場合には、オーナーと運転者が同一とは限らない。家族や知人等が運転することもある*34。また、車載カメラは、同乗者である家族や友人等のデータを取得することもありうる。さらには、盗難時には、車両盗難犯のデータが取得される。

 次に、データの利活用の方法も検討する必要がある。個人データに該当する情報を流通させることは、個人情報の第三者提供に該当するため、原則として本人の同意が必要になる(法23条。なお、提供先が外国の場合には法24条)。また、車載カメラの映像を取得することには、第三者提供を伴わない場合であっても、プライバシーへの配慮も必要である。

 以上のとおり、実際に取得される個人情報を洗い出した上で、データ利活用の方法に応じて関係者から同意を得ることを検討すべきであるが、実際にすべての関係者から同意を得ることは到底現実的ではない。

 そこで、「官民 ITS 構想・ロードマップ2018」の個人情報保護およびプライバシーに係る検討体制の整備に関する記載*35を参照して、以下のような実務対応をとることも検討に値する。

 まず平成27年の改正個人情報保護法により導入された匿名加工情報(法2条9項)の制度を活用する案がありうる。法2条9項は匿名加工情報を「特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたもの」と定義しており、自家用車のプローブ情報等が個人情報となる場合でも、一定の方法を講じ、匿名加工情報に関する規律を遵守することで、これを流通させることが可能である。その場合について、匿名加工情報にするための非識別・非復元措置をどの程度採るべきかなどの問題についても議論がされている*36

 また、車載カメラ画像については、「カメラ画像利活用ガイドブックver2.0」が、地図データ更新等の文脈における風景画像の取得において一定程度写り込みが生じうる場合のプライバシー対応として事前告知時、取得時、取扱時、管理時等の配慮をまとめている*37

 これらのベストプラクティスを参考に、具体的な事情に応じて、専門家のアドバイスを受けながら対応を決定すべきであろう。

(加藤伸樹・大島義則・松尾剛行*38

 

*1:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)をいう。https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html および「Society 5.0とは」(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf)参照。

*2:2017年3月に開催されたドイツ情報通信見本市に、安倍総理、世耕経済産業大臣ほかが出席した際に提唱された目指すべき産業のあり方であり、「Society5.0」を実現していくため、様々なつながりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決を試みた官民での取り組みをいう。http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/index.htmlおよび2017年10月2日「Connected Industries」 東京イニシアティブ2017(http://www.meti.go.jp/press/2017/10/20171002012/20171002012-1.pdf)参照。Connected Industries における共通商取引ルール検討小委員会での議論が進んでいる(2018年12月18日 Connected Industries における共通商取引ルール検討小委員会「中間整理」(http://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/smartcommerce/pdf/20181228_01.pdf)参照。

*3:2017年3月「 第四次産業革命に関する日独共同声明(ハノーバー宣言)の詳細」(http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170320002/20170320002-1.pdf

*4:2018年12月11日 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「産業データ共有事業について 」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/detakatuyo_wg/dai5/dcwg_siryou3-1.pdf

*5:http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/data-katsuyo/data.html。なお、柿沼重志=東田慎平「AI時代における産業用データ利活用の促進―コネクテッド・インダストリーズの成否 ―」立法と調査405号(2018年)56頁(http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2018pdf/20181001056.pdf)も参照。

*6:なお、寺田麻佑「コネクティッドカーとドイツの政策動向」(https://aip.riken.jp/uploads/report3_terada.pdf)も参照。

*7:ITSについては、山下友信編『高度道路交通システム(ITS)と法―法的責任と保険制度』(有斐閣・2005年)がいまだに参照価値が高い。

*8:例えば、2017年6月 警察庁「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/20170601ennkakugatajidouuntensystemkyokakijyun.pdf)は、自動車から遠隔に存在する運転者が電気通信技術を利用して当該自動車の運転操作を行うことができる自動運転技術を「遠隔型自動運転システム」と呼んでいる。

*9:なお、自動運転の注目が高まった技術面での理由の一つが「データ化」であると指摘するものに、井熊均「自動運転時代における高速道路への期待」高速道路と自動車60巻3号(2017年)9頁参照。

*10:2015年11月5日 平林立彦「コネクテッドカーにおけるプライバシー保護について」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000384894.pdf

*11:https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/310308/03_shinkyuu.pdf

*12:http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha01_hh_000066.htmlおよびhttp://www.mlit.go.jp/common/001277894.pdf参照。

*13:道路交通法71条5号の5の義務の免除について、道路交通法改正案71条の4の2第2項柱書、自動運行装置についての道路運送車両法改正案41条1項20号、同2項およは道路交通法改正案2条13号の2、作動状態記録装置についての道路交通法改正案63条、63条の2の2および道路運送車両法改正案41条2項参照。なお、それ以前の試案として、2018年12月「道路交通法改正試案」(http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000181132)も参照。

*14:なお、2018年12月 平成 30 年度警察庁委託調査研究「技術開発の方向性に即した自動運転の実現に向けた調査研究報告書(道路交通法の在り方関係)」(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/jidounten/2018houkokusyo.pdf)は走行時データの記録装置記録されるデータの取扱いについては、個人情報保護法等のプライバシーへの配慮が必要であるという意見を紹介している。

*15:2018年9月 国土交通省自動車局「自動運転車の安全技術ガイドライン」(http://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf)も、自動運転システムの作動状況や運転者の状況等をデータとして記録する装置を備えることが必要であるとする。

*16:なお、例えば、“Connected Industries”自動走行分科会は、①データ収集・利活用、②AIシステム開発、③人材確保・育成、の各論点について検討しており、平成30年度から、交通流観測データ等を収集・共有しシナリオデータを作成していくこととなっている。2018年5月自動走行ビジネス検討会「自動走行の実現に向けた取組“Connected Industries”自動走行分科会」(http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/automated_driving_and_mobility_service/pdf/20180528_01.pdf)参照。

*17:なお、この問題と深く関係する問題に、プラットフォームの問題、公正競争の問題、セキュリティの問題、知的財産権の問題等が存在するので、ここで簡単に述べておく。
 まずはプラットフォームの問題である。データを個々のアクターがバラバラにやり取りをするのではなくプラットフォームにおいて、やり取りをすることが論じられているところ、プラットフォームについては、2018年12月18日 経済産業省 公正取引委員会 総務省「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則について」(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/dec/181218.html)が、データポータビリティや API 開放といったデータの移転・開放ルールのあり方は、データ駆動型社会において、消費者政策のみならず、競争政策や競争基盤の整備としても一定の意義を持つ等、データの文脈におけるプラットフォーマー規制の重要性について言及している。なお、プラットフォーマーの負うべき義務については、例えば、インターネットオークションにつき、プラットフォーマーは欠陥のないシステムを構築してサービスを提供すべき義務があり、その具体的内容は、そのサービス提供当時におけるインターネットオークションをめぐる社会情勢、関連法規、システムの技術水準、システムの構築および維持管理に要する費用、システム導入による効果、システム利用者の利便性等を総合考慮して判断されるべきであるとした名古屋地判平成20年3月28日判タ1293号172頁を参照(これを引用した控訴審の名古屋高判平成20年11月11日自保ジャーナル1840号160頁も参照)。
 次に公正競争の問題については、例えば2017年6月6日 公正取引委員会 競争政策研究センター「データと競争政策に関する検討会 報告書」(https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/170606data01.pdf)参照。
 さらに、セキュリティの問題に関しては、2018年3月30日 自動走行ビジネス検討会「自動走行システムにおける サイバーセキュリティ対策 」(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/jido_soukou/pdf/sankou_002.pdf)参照。
 最後に、データと知財については、福岡真之介=松村英寿『データの法律と実務』(商事法務・2019年)も参照。

*18:http://www.its-jp.org/katsudou2014/tabid_70/id70_1/参照。

*19:なお、コネクテッドカーや自動運転に関するデータは様々な切り口で分類できるところ、衛星リモートセンシング法関係等、特殊な収集方法については2018年12月6日「衛星データ法制研究TF 活動報告」(http://alis.or.jp/img/ALIS20181216_kozuka.pdf)参照。

*20:2018年7月17日 AIネットワーク社会推進会議「AIネットワーク社会推進会議報告書 2018別紙1 AIネットワーク化が社会・経済にもたらす影響 ~ 分野別評価 ~」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000564148.pdf

*21:なお、位置情報とプライバシーにつき2014年7月「緊急時等における位置情報の取扱いに関する検討会 報告書 位置情報プライバシーレポート ~位置情報に関するプライバシーの適切な保護と社会的利活用の両立に向けて~」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000434727.pdf)や「プローブ情報サービスにおける個人情報保護のガイドライン」(http://www.jari.or.jp/Portals/0/ja/kankohbutsu/hokoku/its/jissyo/abstract/probe11.htm参照)も参照。

*22:2018年6月15日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 官民データ活用推進戦略会議も「世界最先端でジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180615/siryou5.pdf

*23:2016年7月28日 加藤尚徳「プライバシー問題はなぜややこしい?『プライバシー』と『プライバシーの権利』の違い【第1回】 」(https://enterprisezine.jp/article/detail/8277

*24:2017年2月10日 内閣官房IT総合戦略室「自動運転の公道実証に係るデータの共有等の進め方(案)」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/detakatsuyokiban/dorokotsu_dai2/siryou3.pdf)。後述「官民 ITS 構想・ロードマップ 2018 」の自動運転、コネクテッドカー関連で想定されるデータのやり取りの表も参照。

*25:2017年12月7日 Sam Abuelsamid「『コネクテッドカー』を不安視する人、日本など6か国の半数以上」(https://forbesjapan.com/articles/detail/18829

*26:「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(データ編)」は、データ提供・データ創出・データ共用という3種類の契約類型に分類して議論をしている。なお、同ガイドラインはデータ・オーナーシップを決めることを推奨しているが、実務上の課題につき福岡=松村・前掲注17)54頁参照。

*27:経済産業省知的財産政策室『不正競争防止法平成30年改正の概要 (限定提供データ、技術的制限手段等)』(http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/H30nen_fukyohoshosai.pdf)および福岡=松村・前掲注17)36頁も参照。

*28:なお、基本的には提供者にとって個人データなら個人データとしての第三者提供等の規律が及ぶ。問題は提供者にとっては個人データではないが、受領者にとって個人識別性がある場合であり、ある論文では執筆者1名は法23条の適用を否定したが、2名は肯定したとされている(若江雅子=森亮二=吉井英樹「オンライン広告におけるトラッキングの現状とその法的考察 ―ビッグデータ時代のプライバシー問題にどう対応すべきか」情報通信政策研究2巻2号(2019年)II-1頁 http://www.soumu.go.jp/main_content/000599872.pdf)。

*29:2016年9月 「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書」(http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915001/20160915001.html

*30:2017年2月 データ流通環境整備検討会 AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ「データ流通環境整備検討会 AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ 中間とりまとめ(案) 」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/dai2/siryou2.pdf

*31:2018年6月 情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」(http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180626002/20180626002-2.pdf

*32:2018年3月30日 自動走行ビジネス検討会 「自動走行の実現に向けた取組方針報告書Version2.0」(https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180330002_02.pdf

*33:「新たなデータ流通取引に関する検討事例集」(2018年8月 IoT 推進コンソーシアム 総務省 経済産業省「新たなデータ流通取引に関する検討事例集Ver2.0」(http://www.meti.go.jp/press/2018/08/20180810002/20180810002-1.pdf)。ただし、商用車のデータも従業員の個人データになりうるし、バスの場合には乗客との関係でも個人データとなりうる(ICカード情報による乗客の識別、観光バスーのツアー参加者情報等)。藤村明子「コネクティッドカーと個人情報保護法」(https://aip.riken.jp/uploads/report5_fujimura.pdf)参照。

*34:福岡=松村・前掲注17)187頁も参照。

*35:2018年6月15日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・ 官民データ活用推進戦略会議「官民 ITS 構想・ロードマップ 2018」(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/its_roadmap_2018.pdf)は、「ITS・自動運転におけるデータ利活用が進展する中、そのデータの利活用にあたっては、そこに含まれる個人情報の保護やプライバシーの権利について考慮する必要がある。特に自動運転システムに各種のデータを利用するにあたっては、自動車業界からは、個人の位置情報取得に係る同意やカメラデータ等に含まれる周辺車両、歩行者等の情報の扱いが課題との指摘もある。このような中、2015 年 9 月に改正・公布され、2017 年 5 月に施行された改正個人情報保護法においては、誰の情報か分からないように加工された『匿名加工情報』について、企業の自由な利活用を認めており、特にプローブデータの加工方法については、2017 年 2 月に個人情報保護委員会が発表した報告書において例を示している。また、カメラ画像に係るプライバシー保護については、2017 年 1 月、カメラ画像についてその特徴を踏まえつつ利活用の促進を図るため、事業者が、生活者とそのプライバシーを保護し、適切なコミュニケーションをとるにあたっての配慮事項を整理したがイドブックを公表しており、2018 年 3 月に改定した 。今後、このような事例を参考にしつつ、プローブデータや走行映像データ等の利活用を図っていくことが必要となる。その際、データの利活用に関しては、法制面での整合性のみではなく、当該データに係る個人にとっても有用なサービスを提供することを明確化することが鍵であることに留意しつつ、取り組むものとする」とする。

*36:2017年2月 個人情報保護委員会事務局「パーソナルデータの利活用促進と消費者の信頼性確保の両立に向けて」(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/report_office.pdf)では、自動車会社が保有する移動履歴情報を匿名加工情報の枠組みで小売業提供する場合の具体的加工方法について論じる。なお、2018年3月ダイナミックマップサービスプラットフォーム検討コンソーシアム「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)・自動走行システム自動走行システムの実現に向けた諸課題とその解決の方向性に関する調査・検討におけるダイナミックマップサービスプラットフォームの試作及び検証」(http://www.sip-adus.go.jp/file/202_s.pdf)は、混雑予報に必要な人口情報は、個人情報保護法に基づき、特定の個人を識別できないよう個人情報を加工し、その個人情報を復元できないよう匿名加工が必須となる。これらの処理を加えることにより、リアルタイムな情報提供に対応できない場合がある。個人情報の保護とデータ利活用のバランスがとれた情報提供の仕組み、利活用促進の取組が求められると指摘する。

*37:2018年3月 IoT推進コンソーシアム=総務省=経済産業省「カメラ画像利活用ガイドブックver2.0」(http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180330005/20180330005-1.pdf

*38:本稿は、松尾剛行が中京大学ロースクール教授の中川由賀先生にご依頼頂いた、ブリーフィングがきっかけとなっている。中川先生に感謝したい。また、寺田麻佑先生には、資料提供等についてご協力頂いた。ここに感謝の意を表したい。もっとも誤り等文責は3名(とりわけ松尾剛行)にある。

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