第0回 連載開始にあたって

  弁護士加藤伸樹、大島義則、松尾剛行の私たち3名は、かねてより個人情報保護やプライバシーに関する理論的分析と、実務上の諸問題について共同研究を進めてきた。

 その研究の成果の一部は、他の弁護士とも共同で『金融機関における個人情報保護の実務』(経済法令研究会)にまとめ、本年6月に公刊したところである。また、加藤と大島の協力を受け、松尾は『クラウド情報管理の法律実務』(弘文堂)を本年9月に公刊し、クラウドにおける個人情報・プライバシーを中心とした情報管理について検討した。

 その後も、たとえば改正個人情報保護法については重要な動きが出てきている。まず、本年8月に規則案・政令案が公表され、パブリックコメント手続に付された。その結果は本年10月4日に公表された。次に、本年10月5日にガイドライン案が公表され、パブリックコメント手続に付された。その結果は近日中に公表されると見込まれる。

 これ以外にも、来年春を目指す改正個人情報保護法の本格施行に向け、各業種ごとの認定個人情報保護団体によるガイドライン等が出されると見込まれる。また、このような改正個人情報保護法の動きだけではなく、例えば「忘れられる権利」についてさまざまな内容の裁判例が出されるなど、プライバシーに関する興味深い動きも多い。

 これらの実務的意義について、弁護士の立場から、わかりやすく解説し、かつ速報性をもって公表することで、各企業の法務部門や弁護士のニーズに答えるとともに、一定の理論的分析も行うことで学説や情報法制の発展に少しでも寄与したいというのが、私たち3名の考えである。

 そして、そのような意向を弘文堂にお伝えしたところ、この「弘文堂スクエア」での連載という形でそれらを公表してはどうかというご提案を受けて、このたび実現にいたったという次第である。このような弘文堂のご厚意に感謝したい。

 本連載では今後、個人情報・プライバシーに関する実務についての最新動向について、さまざまなトピックを扱っていきたいと考えている。まず第1回~第5回においては、上記ガイドライン案の解説を行う予定である。第6回以降においては、「忘れられる権利」やプライバシーとセキュリティ(安全)の関係をはじめ、個人情報保護法に限らず個人情報・プライバシーにまつわる実務の最新動向を紹介していく。

 本連載が読者にとって有用な示唆となることを切に願っている。ご期待を乞う次第である。

 

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